2011年1月27日木曜日

震災ボランティアからのメッセージ 「てんと村に集った若者たち―阪神・淡路大震災、ちびくろ救援ぐるうぷの活動」開催報告

 1月18日(火)、国際文化学部M202教室にて、標記の企画を開催しました。都市安全研究センター学生ボランティア支援室と「生きづらさから考える会」の共催です。
 阪神・淡路大震災が発生した1995年は、各地から多くの人びとが被災地に駆け付け、「ボランティア元年」とも呼ばれました。今回の企画では、そんな「震災ボランティア」として若者時代を生きてきた方々を講師としてお招きし、今の若者たちにメッセージを伝えていただきました。

 講師は、神戸市兵庫区の「ちびくろ救援ぐるうぷ」で事務局長を務められた、よしのさん(当時16歳!)と、同じグループで活動されていた、空(kara)さんです。このグループは、阪神・淡路大震災が起きた際、神戸市兵庫区にある「ちびくろ保育園」に集まった人々による救援活動から始まりました。その後、保育園から近くの公園に拠点を移し、全国から集まった様々なボランティア、特に若者たちを受け入れて救援活動を展開しました。現在、神戸大学生などが全国の災害被災地で展開している足湯ボランティア活動も、このグループが起源です。
 最初に、当時の活動の様子を映像で紹介していただきました。テント村や仮設住宅の内外で、当時10代や学生だった若者たちが活き活きとしている様子がうかがえました。そして、講師のお二人に、スロースペース・ラミの小野洋さんがインタビューする形で、当時を振り返りました。お二人以外のメンバーにも、お話をいただきました。「ちびくろ救援ぐるうぷ」は、被災者/ボランティアという区別を超越した、ひとつのコミュニティであったことが明らかにされました。そして、そこでできた人間関係は今も続いているとのことです。

 参加者は、学生、卒業生、「ちびくろ救援ぐるうぷ」の関係者の方など総勢30名強。今の若者(学生)たちからは、「泥臭い話が聞けた」「『一生の友達を作ってください」という言葉に感動した」「『被災直後はボランティアと生活の境目はなかった』と聞いて、今とは違うなと思った」などの感想が寄せられました。

阪神・淡路大震災16周年記念講演会 神大生へのメッセージ 開催報告

 1月12日(水)、国際文化学部M202教室にて、標記の企画を開催しました。都市安全研究センター学生ボランティア支援室と神戸大学ニュースネット委員会の共催です。
 講師は、兵庫県佐用郡佐用町で小学校の教諭を務められてきた、上野政志さん。当時、発達科学部2年生で20歳だった長女・志乃さんを震災で亡くしました。また2009年8月の佐用町水害では、教え子さんたちが命を落としました。

 そんな上野さんの講演のテーマは、「生きてこそ~1.17を忘れない」。災害というカテゴリーに収まりきらない、生命とは何かというきわめて深遠な内容でした。志乃さんは2日後に成人式を控えていたそうです。授業で提出したレポートには「家族は絶対的なもの」と書いていたそうです。そんな娘さんの突然の死という不条理を、「逆縁」という言葉で表現されました。親は一生、悲しみから逃れられない、だからみんなに忘れないでいて欲しいと訴えられました。上野さんは現在、いくつもの社会活動に携わっておられるとのことで、お話の内容も多岐にわたりましたが、いずれの内容も、生命(人間に限らず)を大切にするという姿勢が滲み出ていました。生と死という、言葉だけでは表現しきれないものを、もどかしいながらも何とか次世代に伝えていきたいという、いかにも教育者らしい上野さんの姿を見ることができました。

 参加者は、学生、卒業生、報道関係者など合計31名。参加者から回収したアンケート用紙は、どれも感想欄に字がびっしりと書き込まれていました。「『物のように扱われる遺体』の体験談に考えさせられた」「生きていることの実感を意識しながら生きていこうと感じた」「“話を聞ける”人になりたい」「(話を聞くことで)理解はできなくても、受け止めることはできるのだと気付かされ、救われた気がした」などの感想が寄せられました。

震災15周年記念連続講座 第3回「苦闘からの教訓―兵庫県の防災と危機管理」開催報告


 10月31日(水)、国際文化学部B102教室にて、標記の講演会を開催しました。日本災害復興学会共催、震災15周年記念連続講座「阪神淡路大震災と私のターニングポイント―3つのキーワードでたどる」の第3回目です。
 今回の講師は、初代兵庫県防災監、兵庫県副知事を歴任された、財団法人兵庫県国際交流協会理事長、齊藤富雄先生です。大震災の教訓を活かした防災対策・危機管理に努めてこられた経験をもとに、災害時の行政の役割についてお話いただきました。
 今回の3つのキーワードは「失敗を活かす」「繋がりを活かす」「人を活かす」でした。齊藤先生は、大震災のときは、家族を田舎に帰し、ご自身は県庁に泊まり込みで災害復興に携わり、その後1996年に初代防災監に就任されて以降も、兵庫県内で起きたさまざまな災害や危機管理事案の対策を指揮してこられました。
 その経験を「実践的危機管理10の視点」という10本の標語に見事にまとめられています。いざというときのために、徒労をいとわずに最悪の事態をイメージし、マニュアルをつくっておくこと、そのマニュアルの欠点を洗い出すために、「失敗する訓練」を重ねること、日常的に使うシステムを非常時にも使うことなど、貴重な教訓を伝授していただきました。そして行政が復興を担う際には、「創造的復興」という発想が重要であることを訴えられました。最後に、今後必ず起こるであろう大地震は数十年後に来る可能性が高いから、次代を担う若者たちに期待したいという、熱いメッセージで締めくくられました。

 参加者は、学生、教員、卒業生、一般企業の方など総勢30名強。「とても聞きやすかった」「進路について考えさせられた」「失敗から成功を得るという考え方に共感した」などの感想が寄せられました。